
先日、3泊4日で愛媛県に行ってきました。
今回の旅の目的の一つは、日本が世界に誇る「海事都市」今治を訪問すること。
そこには、観光ガイドには収まりきらない、日本の基幹産業を支える熱い現場がありました。
1. 「造船の街」今治:空を突くクレーンの群れ
今治市は、日本最大の造船・海運企業が集積する街です。
その歴史は古く、村上水軍の時代から続く瀬戸内の海上交通の要所として発展してきました。
現在、今治造船をはじめとする数多くの企業が、世界シェアの大きな一翼を担っています。
しまなみ海道を渡る際、まず目に飛び込んできたのは、巨大な造船所のクレーンが林立する光景です。
穏やかな瀬戸内海の多島美と、重厚な鋼鉄の建造物が共存する景色は圧巻。
この巨大な船たちが、世界の物流を文字通り支えているのだと肌で感じました。
2. フィリピンと日本:二つの「海洋国家」を結ぶ絆
造船や海運の現場で、今や欠かせない存在となっているのがフィリピン人就労者です。
日本とフィリピンには共通点があります。
どちらも多くの島からなる「島国」であり、古くから海と共に生きてきた「海洋国家」であるという点です。
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地理的共通点: 複雑な海岸線と豊かな海域。
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海への適応力: 船を操り、海に関わる仕事に対する心理的ハードルの低さ。
こうした背景もあり、現在、日本の外航船員の約7割、そして造船現場での作業の多くをフィリピンの方々が担当しています。
3. 「3K」か「憧れ」か:労働観のギャップとDXの波
日本国内において、造船や海運業は「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージが先行し、若者のなり手不足が深刻な課題となっています。
しかし、フィリピンに目を向けると、状況は全く異なります。
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フィリピンでの評価: 船員や造船エンジニアは、高収入で家族を支える「現代の英雄」として、若者に非常に人気の高い職業です。
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DXとロボティクス化: 現在、造船現場では新来島どっくが溶接ロボットを導入するなど、急激な自動化(DX)が進んでいます。
ここで「機械化が完了すれば、外国人材は不要になるのではないか?」という疑問が生じます。
しかしロボットを「使いこなす」オペレーターや、最後の緻密な仕上げを担うのは、依然として「人」。
外国人材の役割も、溶接などの単純作業から「機械を操る技術職」へとシフトしていく過程にあるのではないでしょうか。
4. なぜフィリピン人が選ばれるのか:特性と「距離」のメリット
外国籍のクルーズ船に乗ると、フィリピン人クルーの多さに驚かされます。
彼らが海運業界で圧倒的に支持される理由は、その高いホスピタリティと英語力、そしてチームワークを重んじる特性にあります。
また、日本で働くフィリピン人にとって、日本という国は「心理的・物理的に近い」という大きなメリットがあります。
「日本は居座るところではなく、稼いで、学んで、すぐに帰れる、行き来できる場所」
彼らにとって日本は、家族のいる母国から数時間で帰れる場所です。
外国人材には、不法残留や定住化のリスクを懸念する声もありますが、フィリピン人には「日本で高度な技術を学び、母国に錦を飾る」という循環型のキャリアパスを描いている労働者が多いのです。
この「適度な距離感」こそが、健全な雇用関係を維持する鍵になっているのかもしれません。
おわりに
今治の造船所から見えた景色は、単なる地方産業の風景ではなく、グローバルな人材交流と技術革新が交差する「未来の日本」の姿でした。
技能実習から育成就労へと制度が変わる今、彼らを「不足を補う労働力」としてではなく、共に海を守る「パートナー」として向き合っていく。
美しく平和な瀬戸内海の風景と共に、その思いをあらたにする旅となりました。





