フィリピンの「PESOマネージャー」に学ぶ、若者支援の新しいカタチ

ミンダナオで出会った「仕事の世話人」

先日フィリピンのミンダナオ島を訪れた際、非常に印象的な存在に出会いました。

それは「PESO(ペソ)マネージャー」と呼ばれる行政官です。

日本では聞き慣れない肩書きですが、彼らは自治体(市町村)に所属し、地域の若者や住民の「就労」を文字通りワンストップで支える、いわば地域の雇用エージェント

日本の行政窓口とは一線を画す、その情熱的で具体的な支援スタイルに、日本の社会人教育のヒントが隠されていました。

「ハローワーク」との決定的な構造の違い

日本でPESOに該当する組織といえば、厚生労働省が運営する「ハローワーク(公共職業安定所)」です。

しかし、この両者には大きな違いがあります。

  • 中央集権 vs 地方密着:日本のハローワークは「国(厚生労働省)」の機関であり、全国一律のシステムで動きます。一方、PESOは「地方自治体(LGU)」の予算で運営されており、市長や知事の直轄組織であることが多いです。そのため、地域の産業やニーズに合わせた柔軟な動きが可能です。
  • 「事務官」 vs 「プロデューサー」:ハローワークの職員は主に求人の紹介や雇用保険の処理を行う「行政の事務」が中心です。対してPESOマネージャーは、企業の求人開拓から、TESDAと連携した職業訓練の提案、さらには海外就労のあっせんまで、個人のキャリアをプロデュースする役割を担っています。

「就職後のスキル」を行政が先に担保する

日本とフィリピンの最大の違いは、「実務スキルをいつ、誰が教えるか」という点にあります。

  • 日本: 大学や高校は「就職活動(マッチング)」を支援し、実務スキルは入社後に「企業」が教えるのが一般的です。

  • フィリピン: PESOマネージャーは、未経験の若者に対して「まずTESDA(技術教育技能開発庁)でこの資格を取りなさい」と導きます。「国がスキルを証明した人材」として市場に送り出すため、企業側も安心して採用できる仕組みです。

特にミンダナオのような地域では、行政が「食い扶持としてのスキル」を授けることが、若者の貧困脱却や地域の安定に直結しています。

「就職は本人の努力」という突き放した姿勢ではなく、「行政が売れる人材に育て上げる」という強いコミットメントがそこにはありました。

日本の若者教育に必要な「踏み込み」

日本の就職支援は、どうしても「エントリーシートの書き方」や「マナー」といった表面的なものに偏りがちです。

しかし、終身雇用が揺らぎ、企業に教育余力がなくなっている今、日本にもPESOマネージャーのような「個人の実技スキルを担保し、出口まで伴走する地域のハブ」が必要なのではないでしょうか。

「組織に入るための準備」ではなく、「どこでも働ける力を授ける教育」へ。

ミンダナオのPESOマネージャーたちの活気ある姿は、これからの日本の社会人教育が目指すべき、一つの自立支援の形を示しているように感じました。

比較項目 フィリピンのPESOマネージャー 日本のハローワーク(厚労省)
所属 地方自治体(市町村長直属) 国(厚生労働省)
役割 地域の雇用開発・海外送出・教育相談 求人紹介・失業給付・雇用保険
スタンス 攻め(求人開拓・訓練の勧誘) 守り(窓口での受付・相談)
連携先 職業訓練校(TESDA)と密接連携 企業や民間派遣会社との連携

最後までお読みいただきありがとうございました。

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